おしえてRE:メイド/レビュー  Written day 2006/12/03
【ブランド】 ユニゾンシフト 【ジャンル】 ダメッコメイドさん再教育アドベンチャー 【原画】 織澤あきふみ
【シナリオ】 七央結日 【価格】 9240円(税込み)




萌え路線は個性を出しにくい?

タイトルの通り、いわゆる『メイドもの』の本作。有り体に言えばかわいいメイドさんとイチャイチャしちゃって萌え萌えなゲームです。こういうゲームはおもしろいとかおもしろくないとか、そういう判断が下しにくい種類のゲームだと思うのですが、どうでしょう? 萌えるか萌えないか。つまるところ、ここにすべてが集約されているんじゃないかな、と思うわけです。……というか、それが美少女ゲームの基本なのかもしれませんが。

さて、本作はメイド養成の名門校の落ちこぼれメイド4人を「再生」させる再生請負人の男が主人公です。単純なドジッ娘メイドは数おれど、名門学校の落ちこぼれという設定はなかなかないんじゃないでしょうか? 普通のメイドゲームだと、「メイドのくせになんでこんな失敗をするんだ」みたいな感じで僕はいつもつまづいてしまうのですが、最初っからドジの烙印を押されていると、これがすんなり設定として胸に落ちてくるわけです。そのうえ、これが「ゲームの世界」ということも手伝ってか、プレイ中にどんなドジも容認してしまう自分がいました。

床を水浸しにしたり、シーツで庭一面が真っ白になってしまったり……。

「なぁあんだ、それくらいのことか」と思われるかもしれませんが、これってよくよく考えてみるとすごいです。だって、台所で、台所にいて、シンクから水が溢れて床がびしょびしょになっているのに気づかないんですから。本作以外でもゲームやマンガでこんなシーンをよく見かけるので現実的な感覚が麻痺してしまいそうですが、よくよく考えてみるとこれっておかしすぎる。コメディであることは分かっていても、それがエロゲーであることが分かっていても、普通に炊事洗濯が出来ているメイドさんがいきなりそんなドジをやらかすなんてありえないと思ってしまうわけです。

そして、この手のゲームはそう思ってしまったら負け。なんだかシラけてしまう。自業自得なんですが、「このシナリオつまんねー」みたいな感じで投げ出したくなってしまうわけです。

しかしまあ、本作はそこのところを打破する試みがあったように感じられました。つまるところ、導入部分にてこれでもかっていうほどメイドのドジ加減を見せつけて、「このゲームはこういうものなんです」という固定概念をプレイヤーに先に植えつけるところからはじめているわけです。「とりあえず雰囲気だけ」だとか、「まあ、こういうノリで」だとか、そんな軽い導入部分を用いるゲームが多いなか、本作はコンセプトとシナリオ構成がしっかりと成り立っていると思いました

それでも、この手のゲームはなかなか個性を出しにくいと思います。根の部分がしっかりしてても、咲いている花はみんな一緒。萌えの花、メイドの花。そんなの今時どこでも咲いているわけですから、他作品と決定的に違うところはどこですかって聞かれても、正直答えられません。これが、登場するヒロインがみんな巨乳、みんなツルペタ、みたいなことだと個性もある程度出てくるんでしょうが……。でも、ユーザーの獲得のことを考えて手堅く4人それぞれ違う個性のヒロインなんかを用意してしまうとやっぱりダメ。まだまだ突っ走ってない。全員メイドで、全員ドジッ娘。ここまで揃えたんだから、もうひとっ走り突き抜けた設定があれば群を抜いたゲームになったのでは、と思いました。





エロくて、けっこうシナリオも充実?

僕は本作ではじめて『ユニゾンシフト』のゲームをプレイしたのですが、まあそのエロイことエロイこと。『アトリエかぐや』もウカウカしていられませんなと言った塩梅です。とにかく濃い(汁も濃い・いや、失礼)ので実用的という言葉には事欠かないかと思われますが、これが意外(?)なことにシナリオもそこそこ筋が通っていたりします。

前述したように、4人のダメメイドは名門校の落ちこぼれ。だけど、持っているものは持っているわけです。再生請負人である主人公は、その、持っているけれど花開かない才能をどうやって開花させるか、というところに焦点を絞ってヒロインと接していくわけですが……。

……いやもう、本当にこの設定には感服いたしました。今までのドジッ娘というキャラ設定のヒロインには、とんどもないタイミングでやらかすドジに理由なんてありませんでした(と記憶しています)。つまり天然キャラなわけで。しかし、今回のヒロインにはダメな理由がそれぞれあるわけです。その「ダメ」なところを矯正することによって、メイドとして再生させていく、このプロセスがすばらしい。

「ん? 褒めすぎじゃない?」かって? いえいえ、そんなことないですよ。今まで、理由のないドジに首を捻りながらもなんとか「ここは笑っておこう」と努力してきた僕にとって、この設定は実に斬新でした。純愛ゲームではこの手の「克服話」はよくありますが、まさか萌えゲーでそれを見せられるとは想像もしていなかったわけです。ま、これはあくまで個人的な意見ですが、萌えゲーにもやっぱりしっかりした基盤は必要だなーと、しみじみと思ったゲームではありました。





システム S サウンド B グラフィック S シナリオ C 総評 B

さて、それでは総評ですが……。

システム周りは可もなく不可もなく。システムの評価って、一番困るんですよね。使い勝手がよかったらどれもみんな一緒に思えてきてしまいますから。

サウンドに関しては、残念ながら耳に残るBGMはなく……。その逆で、グラフィックは秀逸の一言。大手の力ここにありという感じでしょうか。絵はかわいいし、イベントCGもエロくて文句のつけ所もなし。ちょっとバランスが崩れててもS評価を出さざるを得ない絵というのは見ていても気持ちいいです。

シナリオは、前述した通り、けっこう筋が通っていたりします。「再生請負人」という特殊な主人公を扱っていることにも関係してくるのでしょうが、ある程度まともなシナリオでなければ、「裏側」を知る主人公のキャラと釣り合わなかったのかなーと思ってみたり。あるいは「再生請負人」という設定ありきだったのだろうか……。それだと、へたに萌えゲーをやるよりもハードボイルド系で攻めてほしかったです。

友人の間では、僕が「けっこうおもしろかったよ」と言ったらほとんど嘘に聞こえるそうです。なぜ? まあ、それはおいておくとして、人にオススメするとなると、やっぱり好みの問題。いくらシナリオがそこそこでも、萌えゲーが無理な人には絶対オススメできないですね。そこのところを考えると、やっぱり萌えゲーってなかなか外の世界に出て行けないジャンルだなーと思うわけです。僕が知る限り、萌えゲーでありながらジャンルを股にかけてなおかつおもしろかったのは『モエかん』くらい。次回作はぜひ異色の萌えメイド物語に挑戦してほしいなーと思いました。




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