Piaキャロットへようこそ!!G.O./レビュー  Written day 2005/10/31
【ブランド】 カクテル・ソフト 【ジャンル】 恋愛体感SLG 【原画】 フミオ/ひなた睦月/村上水軍/きみづか葵/水瀬凛
【シナリオ】 稲村竜一/草薙こうたろう/うらわ/宮村優 【価格】 9240円(税込み)




なにもしゃべらないほうがいい?

非常におもしろいのに、非常につまらない。これまた困ったゲームバランスでした。ストーリーそのものはファミレスを舞台にウェイトレスとの交流を描いたコミカルな作品に仕上がっていて、軽いノリで青春を満喫したいタイプのユーザーにはとても受けがいいタイプの話だったと思います。この手のゲームの主人公は単純で一直線で、やたらとやる気があり、なぜか女の子にモテて、頼りにされ、鈍感で、とてもさわやかで、絶対にニートにはなりえないタイプなんですが、まあそういう主人公を描かせるとF&C以下、カクテルソフトは本当にいい仕事をしてくれます。

が、システム面がどうかというと、最初のうちはよくても最終的には嫌気がさすことこの上ないですね。育成パートがその最たるものです。一週間のバイトスケジュールを組む際に、各キャラクターの成長に見合った仕事の割り振りを行わなければならないのですが、これがとんでもなくめんどくさい。自分のスケジュールをたてるだけならまだしも、働いているバイトの女の子6人分×7日間=42枠の仕事を決めなければならないというのは、精神的にとても疲れる作業でした。

最初のうちはいいんです。1人目、2人目をプレイしている頃はいいんですよ。まだ、どの仕事に誰を配置しようかなーと楽しみながらできるんです。でも、それが3人目4人目となってくるとだんだん要領もわかってきます。押さえるべき点が、実は狙っているヒロインと主人公の休日が合っているか否かだけだということもわかってきます(称号を得るためにはそれなりに全員の仕事に配慮しなければなりませんが)。すると、スケジュールの組み立てが必然的にただの作業と化してきます。

つまるところ、このシリーズの前作、前々作をプレイしたことがあるという方からすれば、「またか」というようなシステムの踏襲です。まあ、ここで以前からのファンは「相変わらずだなぁ」と安堵するのかもしれませんが、プレイしていて嫌気がさしてくるシステムはいかがなものかと思うわけで。仕事中アニメーションなどは、やたらとプレイ時間を喰うので途中からはカットのありさま。一日の予定を決めるのも、女の子をサポートするパートも、すべてただのクリック作業と言ってもいいくらいです。まあ、仕方がないと言えば仕方ないのですが、つまらないと言えばつまらない。

さらに言えば、ゲームシステム上、主人公の心情の如何に関わらず、狙った女の子のことだけを追い回すという結果になってしまうわけで。女の子の部屋に入り浸り、電話をかけ、仕事のサポートを優先的に行う。狙った女の子と会うことを選択するということは、結果的にその女の子と会うことが事前にわかった上でのイベント発生になってしまいます。つまり、普通のAVGのように、いつ、どこで、誰に会うかわからない(それでもある程度は予想できるけど)というサプライズがないわけです。

こちらが組んだスケジュールの通りに忠実に行動する主人公。そのくせ感情があるので、プレイヤーの分身というには独立しすぎていて、かといって、AVGの主人公のように自分の感情を優先して勝手に物語の上を歩いてくれるわけでもない。

こういうタイプのゲームは、いっそのことドラクエシリーズの主人公のように「なにもしゃべらない」ほうがかえってしっくりくるのかもしれません(それはそれで、18禁美少女ゲームとしては破綻していますが)。





キャラを生かすかシナリオを生かすか

と、上でかなり毒は吐いたものの、それじゃあまったくおもしろくないのかと言われればそれも違います。いちおう萌えの最前線(?)をひた走る大手ソフトハウスの作品なだけあって、押さえるべきところはきちんと押さえています。総勢15人いるヒロイン全員きちんと個性が立っているし、ご都合主義的ではありますが、それぞれ個別パートがあったり、実はルート同士の粋な絡みがあったりと、楽しみ方は様々。ウェイトレスの制服も、飽きた頃にまた次のものに入れ替わるという感じで、プレイヤーの目を飽きさせない工夫が見られます。

ともあれ、この作品で一番いいと思うところが、やはり全ルート共通の明るいムードでしょうか。各ヒロイン、それぞれ山場はあります。暗い雰囲気に陥ることも当然のことですがあります。が、まず間違いなく、そのムードを最後まで引きずることがないわけです。プレイ後の明るい開放感が約束されているというか、安心してゲームに望めるというところに関しては、この作品、本当に秀逸の一言。盛り上がりには欠けますが、安定感は抜群です。軽めの青春コメディが大好きな方(僕のことですが)には断然オススメ。

それと、作業と化すスケジュールなどのパートも含め、軽いストーリーのわりには案外長く遊べます。そりゃあ15人もヒロインがいるわけですからね。しかも、レギュラーの5人と寮母さん以外は、みんなキャンペーンの2週間だけの短期バイト。ゲームを進めるにつれてお店のなかで働いている人間が変わってくるので、決められたストーリーのなかにもある程度動きが見られます。そのたびに制服も変わりますし、あとは私服(一部、メイド服やゴスロリ服、チャイナ服などあり)、水着など、いろんな女の子のいろんな格好が見られるというのがおいしいところでしょうか。絵のレベルも極めて高いですし、目の保養という意味では納得のいく出来だとは思います。

会話のテンポもコミカルだし、汗などのアイコンもいい味を出していますし、萌えゲーとしてのポイントは完全に押さえていると言っていいでしょう。エロは薄めですが、さすがにシュチュエーションも豊富。エキストラシナリオも充実していますし、この手のゲームとしては、充分すぎるくらいのスペックは持っていると思います。

ぬるく萌えたい。そういう意味でのバランスは最適を保っている。たぶん、このゲームの評価はすべてここに集約されるのではないか、と思いました。





システム A サウンド B グラフィック A シナリオ C バラエティー度 S 総評 A

さて、それでは総評ですが……。

システム面は可もなく不可もなく……と言いたいところですが、若干気になったのがSAVEについて。このゲーム、普通の会話パートではSAVEが出来ず、朝と夜の行動選択パートだけが唯一のSAVEポイントになっています。つまり、途中で選択を間違えると、一度その日の朝まで戻らなければならないというわけです(まあ、それほどまでに重要な選択肢はほとんどありませんが)。既読スキップはなかなか高速だったのですが、全体的に少し重いような気がしました。

サウンド、グラフィックともに良作と言ってよかったと思います。原画家さんが5人もいるわりには塗りがしっかり統一されていて違和感もほとんど感じられませんでしたし、サウンドもコミカルなものが多くてしっくりきていたと思います。シナリオは上記の通り。中身はほとんどありませんが、抜けるような明るい青春を味わうにはばっちりだと思います。

総合力で言えば、どう転んでも駄作にはならないゲームだなと思いました。それがF&Cの売りだな、とも(笑) たとえシナリオがそこそこでも、絵がきれいで可愛く、バラエティーに富んだ萌え要素があり、サウンドもシステムも水準以上で、舞台がファミレスとくれば、マイナス要素があってもプラスにもっていけるだけの力はあると思います。S評価はないと思いますが、AかB、落ちてもCくらいの、妥当なラインを常にキープするバランス。それを保守的と取るのかは別としても、美少女ゲームとしてはばっちり成功していると思いました。




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